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前回からの続編②です。
タイヤ交換を終え、ようやくリスタート。
しかし、この時点で既に約90分のロス。
残り70km弱、想定していたスケジュールは大きく崩れてしまいました。
「今日は島田まで行けるのか?」
そんな焦りが頭の中を占領し始めます。
どっかで休みたい、少し座りたい・・・けどそんなわけにはいきません。
ペダルを回して再び西へ。
しばらく走ると昨年、仲間たちとトランポで訪れたクラフトビールのブリュワリー「WCB」がある用宗駅付近を通過します。
本来なら、
「あぁ、ここ来たなぁ」なんて思い出に浸るところですが頭の中は、
「急げ」
「日が暮れる」
「島田まで行かなきゃ」
その3つでいっぱいでした。
用宗を抜け、焼津方面へ向かいます。
ところが、この焦りが次の失敗を招くことになります。
用宗街道の先、大崩海岸を通過し、その先にある浜当目トンネルへ向かっていた時のこと。
実はこの区間、2024年7月に発生した大規模な斜面崩落の影響で、「浜当目トンネル」を含む県道静岡焼津線が長期間にわたり全面通行止めとなっていたのです。
今思えば、途中には大きな案内看板も出ていました。
普通なら気付くはず。
いや、気付かなければいけなかった。
しかしその時の私は、
雨。
パンク後の焦り。
そして徐々に近づく日暮れ。
そんな状況の中で思考能力が完全に「馬鹿野郎モード」に突入していました。
「まぁ行けるだろ。」
「どうせ自転車なら通れるだろ。」
根拠のない楽観論を振りかざし、猪突猛進。
案内看板をほぼ無視して進み続けます。
大崩海岸の先、登りはじめに差しかかる頃には、すっかり日が落ちていました。
辺りは真っ暗、街灯もほとんどありません。
浜当目トンネルへ向かう道は思っていた以上の急勾配で、左手には真っ黒な海、右手には急峻な崖。
その間を縫うような細い道を登っていきます。
車も来ない。
人の気配もない。
暗いのでかなりの高さを登らされている感じがして聞こえてくるのは雨と波と強風の音、自分の呼吸音だけ(不安)
昼間なら景色の良い海岸線だったのかもしれませんが、この時はそんな余裕はありません。
「クマが出たらどうしよう・・・」
そんなことを考えてしまうくらい心細く、だんだんと恐怖感の方が勝ってきます。
パンクで90分を失った焦りもあり、精神的にはかなり追い込まれていました。
それでも何とか登り切り、浜当目トンネルへ到着。
そして目の前に現れたのは――
完全封鎖されたトンネルでした。
「・・・ですよね。」
どこかで、
「自転車なら抜けられるんじゃないか」
「脇道があるんじゃないか」
そんな都合の良い期待をしていたのですが、現実は甘くありません。
当然ながら抜け道などありませんでした。
ふと見ると、左下へと続く細い道があります。
「こっちなら何とかなるかもしれない。」
そう思い、下り始めたところで嫌な予感が。
途中の案内板を見ると、その道は海沿いの小さな集落へ続く生活道路でした。
慌ててGoogleマップで確認します、すると予感は的中。
集落で完全に行き止まり。
焼津方面へ抜けられる道は存在せず、まるでポケットのように閉じた地形になっていました。
危うく海辺まで下り切ってしまうところでした。
途中で気付けたのは不幸中の幸いです。
しかし、ここでようやく現実を受け入れました。
「引き返すしかない」
再び暗い坂を下り、とにかく人の気配のある場所を目指します。
そして何とか用宗駅へ。
時刻は20時頃。
雨脚も再び強くなってきました。
とりあえず駅へ避難し、ルートを検索します。
正規ルートへ戻るには、安倍川方面まで引き返して国道1号へ復帰。
そこから旧東海道へ戻る必要があり、追加で約15km。
冷静な状態なら走っていたかもしれません。
しかし、この時の私は完全に半パニック状態。
焦りと不安で正常な判断力はほとんど残っていませんでした。
そして決断します。
藤枝駅まで輪行しよう。
幸い東海道線はこの時間帯でも本数が多く、すぐに電車が来ます。
急いで輪行の準備を始めますが、これがうまくいかない。
寒さと疲労と焦り・・・もう色々ぐっちゃぐちゃ
震える濡れた手が作業を邪魔して電車の時間が迫ってきます。
「頼むから間に合ってくれ・・・」
もう心の中は半べそ状態、還暦手前のおっさんが何やってるんだ、と自分でも思います(笑)
それでも何とか輪行袋へ収納完了。
ギリギリで電車へ飛び乗ることができました。
3駅先の藤枝駅で下車。
再びバイクを組み立てます。
電車の中は暖かく、明るく、人がいて、安全でした。
久しぶりに体感する文明社会。
正直、このまま自転車なんてやめてホテルへ直行したい気持ちでした。
しかし旅はまだ終わっていません。
ホテルのある島田までは、あと約8km。
時刻は既に22時を回っていましたが、
「ここまで来たんだから最後まで行こう。」
そう自分に言い聞かせ、再びペダルを回します。
そして――
22:30 島田市のホテルに到着。
長かったDAY1が、ようやく終わりました。
走行距離以上に濃密で、トラブル続きの一日。
ベッドに倒れ込んだ瞬間の安堵感は、今でも忘れられません。
続く